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          EP2CP1−3

紅玉ダンジョン。その内部は溶岩が流れ、洞窟の壁や天井。

細長く続く道を含めた岩石全てが赤い為そう呼ばれている。

溶岩の成分がそう染めるのかどうか定かではない。

何故なら調査しようにもこの洞窟は火属性の魔物の巣窟でもあるのだから。

だがこれから赴く火の神殿はその巣窟を越えた先にあるのだ。

幸いといっては何だがこの紅玉洞窟全体としてはかなり広大だが

火の神殿は比較的浅い層にある。

それもそうだろう。祀られているのが神であろうとマナを管理する魔物だろうと

「神殿」である以上外敵に狙われづらく、かつ人の手が及ぶ範囲に限られるのだから。

もっとも、人並みに知能はあらずとも「祀る」ということを知っている魔物でもいれば

話は別だが。

ルピ「あーつーいー!!」

幅5mくらいの道を列になって進む一行。その真ん中を歩いていたルピが愚痴をもらす。

無理もない。ただでさえこの洞窟内の温度は溶岩によって熱され、肌を焼く程だ。

おまけにルピは死神特有の黒い衣装に身を包んでいる。

イレイサ「上着ぐらい脱いだらどうです・・・?見てるこちらも暑いんですけど・・・」

汗をだらだらと流しながらイレイサが言う。

ルピ「仕様よ!」

全員(仕様・・・?)

えー・・・管理人はあの黒衣装しかしらないので上着脱いだら中何着てるのか

想像できなかったのはここだけの話。

そういいながらも、一行全員の服装はいつもとかわらないのもまた仕様である。

(TWに服装かわるシステムないし・・・染色や変身アイテム除いて)

タカヤ「あんまり騒ぐなよ・・・余計暑い・・・」

先頭を歩くタカヤが向こう側から向かってきたピケルとマグマバブルを

切捨てながら言う。

  

正直見ての通り火の粉と火属性っぽいバブル種。

見てるだけで余計暑いので少し八つ当たりこめて斬り捨てる。

道幅が狭いせいかそれほど多く一度に向かってくる魔物は少ない。

しばらく進んだところで足をとめる。

ルシフェル「どしたの?(・ω・)?」

二番目に歩いていたルシフェルが問う。

タカヤ「あれ」

指を前にむかってさす。

その先へと視線を全員が向けると離れた位置に花が見えた。

ルシフェル「こんなとこに花・・・?(・ω・;)」

疑問に思うルシフェル。

ルピ「違うわよ。あれはプラバ」

プラバとは主にペナイン森で見かける食植物だ。

食虫ではない。適当なとこに咲いていて通りかかった

動物を喰らう上に自身光合成の性質も持っている

極めてしぶとい植物である。

ルピ「んでーあの茎の長さの範囲に入らなければ噛み付かれるなんてことは

   ないんだけど・・・」

インテロ「うっし!それじゃ俺の槍で!」

最後尾にいたインテロが横を通り過ぎ槍のリーチを生かせて突き刺す。

・・・はずだったのだが。

インテロに気付いたプラバのつぼみ部分が動き「ニヤ〜」といった感じに

笑い、

インテロ「火炎球はいたぁあああああ?!!!」

槍を突き出そうとした体を急旋回、一行のもとへと走り戻る。

迫る火炎球をルシフェルが発動したクレイアーマーで防ぐ。

ルピ「ここにいるのは亜種で正式名称はボルケイノプラバ。

こっちに気付いたら火炎球で攻撃するよって言おうと思ったのに」

インテロ「ひどいっす・・・それならそうと先に・・・」

スチャッ

次の瞬間インテロの首の前に自分側へ刃の向いた鎌が見えた。

ほんの数センチの幅で。

ルピ「最後まで聞かないのが悪いのよ。文句ある?」

背後で鎌を握っているルピの顔は笑っていたが強烈な殺気に背筋が凍るかと

感じた。

インテロ「い、いえ・・・俺が全部悪かったっす・・・」

それを聞いたルピは煙とともに鎌を消した。

ルピ「わかればよしっ♪」

れすか「ルピちゃん怒らせたら駄目だよー?」

インテロ「・・・了解・・・」

一行にかなり馴染み人間らしい仕草はするものの殺気の強さはやはり死神である。

そんなやりとりをしている間にタカヤが飛による遠距離攻撃で花を散らせた。

タカヤ「そんなことしてないで行くぞ」

再び歩きだしたタカヤに続いていく。

薄暗い部屋の中。窓のないそこは壁にそって置かれた床から天井まで

余すことのない大きな棚に様々な種類、言語で書かれた本が

所狭しと並べられている。

まるでどこかの貴族の屋敷にある書斎のようだ。

その部屋に設けられていた幅の広い机。

机の大きさに不釣合いに一つしかない椅子に腰掛ける人物があった。

机の上に置かれた蝋燭の明かりを用いて今手にしている本を読んでいたらしい。

薄暗いせいか男の顔はよく見えないが高齢で男であるということは感じられる。

静かな空間の中、ページをめくる音だけがその空間に響く。

半刻もしたころだろうか。

男が読んでいた本のページが終わりへと差し掛かった時、

ふと窓もないのに風が吹き、蝋燭の火が消えた。

部屋は一瞬にして暗闇の空間となるが

男は慌てる様子もなく本を閉じた。

「ノックもなく入ってくるとは。少々失礼じゃないかね?」

男は椅子に腰掛けたまま背後。その部屋のドアがあるほうへ

向かって話す。

「人間ごときが決めた礼儀なぞ、我には関係ない」

男が喋りかけた背後から確かに返答があった。

だがその部屋のドアが開いた音も様子もなかった。

その場に「現れた」と表現するのがこの状況で正しいのだろうか。

「ふ・・・そうか。それでどうだったかね?

 [実験体]は」

「力の大きさは悪くはない。実験体レベルでは。だが力の融合は不完全であった」

「力の出力が問題ないならいい。私が必要なのは完全な消去者なのだからな」

の用意はできたみたいだな」

「ああ、完全な消去者のための最高の器がな。見るかね?」

「すでに目にした。奴を使おうとはな」

「知っていたか。なら問題はあるまい。・・・どうやら始まったみたいだな。

 [第1崩壊、マナの均衡]が」

男の言葉に背後にいた存在は頷くことで示す。

「引き続き実験体の監視を頼みたいのだが」

「貴様にいわれるまでもない。だが勘違いするな。貴様が何を企てようが勝手だが

 我には興味ない。我自身彼に興味が沸いただけだ」

その言葉を残し、そこにいた存在は気配を消した。

男は席を立ち、明かりのない暗闇の中呼んでいた本を本棚に戻した。

「奴にとって私のしていることは、人間ごときのやることといったところか。

 ふ・・・いいだろう」

ドアのほうへと歩み、ドア横に立っていた上着かけにかけられていた

上着を羽織りドアを開ける。

暗闇に包まれたその部屋にドアの先から眩い光が差す。

「私の目的さえ果たせればそれでよい!!」

奇声とも聞ける笑いを上げながら男は光のほうへと歩みを進める。

その男が羽織る上着がその光に浮かぶ黒であることが見えたとき、

書斎のドアは閉じ暗闇へと戻った。

道の両脇を流れる溶岩に気をつけながら高温の洞窟内を歩く一行。

その先に溶岩の流れを渡るように橋状のものがあった。

どうやら溶岩の流れにより岩の底部が削り取られ端のような形になったらしい。

その傾斜は神殿を訪れる者達によってつくられたのか階段上に岩が切り取られている。

階段を上り橋の上へ上がったがそのつくりに驚く。

階段を上がるまでは気付かなかったが端の幅は広く向こう側への長さは50m程もある。

自然に作られたとは思えないその光景に見とれるが先頭を行くタカヤに促され

再び歩み進める。

中程まで進んだところでタカヤが歩きながら後へと話しかける。

タカヤ「この橋を渡れば神殿の入り口だ」

れすか「タカヤさんは来たことがあるんですか?」

イレイサ「ええ、あの一件の際カウルから紅玉洞窟を飛ばして森の小道側へ

     急ぐことになったので終わった後自分たちで一度来たんです」

ルピ「ふーん。それで[]って呼んでたのね。守護獣に会ったらしいし」

タカヤ「ああ・・・無事だといいんだけど」

全国規模で起こった魔物の凶暴化。その影響を受けている可能性が高い。

そう考えたところでただならぬ数の気配を感じ足を止める。

タカヤ「まずい!」

その様子に始めはどういうことかわからなかったがすぐにその場にいた全員が気付いた。

橋の先と後ろより大量の魔物に挟まれていることを。

個体数不明のピケル。そしてトカゲに炎の羽がついたような魔物フレイムリザードが

前に3体、後に2体の計5体。

ピケルは範囲攻撃で問題ない・・・といいたいところが問題があった。

今自分たちが立っているのは人間の手によって形は整えられているとはいえ

元は自然にできた橋。

範囲攻撃により地に衝撃を与えればそれにより崩れる恐れがある。

しかも都合の悪い事にフレイムリザードはその炎の羽で自由に飛びまわり

火炎球で攻撃することが出来る。

この橋の幅では避ける範囲が限られている。

タカヤ「正面突破しかないな・・・」

全滅させる余裕も避ける余裕もない。

消去法ではあるがそれしかなかった。

他の者の同意を取ることもなく抜刀し走り出す。

それに遅れることもなくついていく。

意見するまでも無いからだ。

刀を突き出し飛連波を地面に対して極限まで水平に放つ。

元々大きさが人の腰程までもないピケルに決定的なダメージを与えることは出来ず

上部を削り取る。だが狙いはピケルではない。

その前衛の後にいたフレイムリザードが狙いだ。

だがその攻撃を読んでいたのか、フレイムリザードは難なく左右へと散り飛翔。

無数の光弾ははるか先の岩の壁にぶつかっていき消滅していった。

失敗に思われたその攻撃だがタカヤは表情を変えない。

目的は敵の殲滅ではないのだ。

突破する正面の敵の数さえ減ればいいのだ。

橋の真ん中を走っていたタカヤが横へずれる。

その真後ろから詠唱を行っていたイレイサがアイスナムを放ちピケルの集団の動きを

制限する。

その隣かられすかがアイスミサイルを放つ。

幾多もの氷柱が動きが遅くなったピケルの一体一体に外すこともなく突き刺さり

消滅させていく。

巨大な質量を持つアイシングピアスによる氷塊の攻撃では地面に多大な衝撃を

与える恐れがあった。

だがアイスナムで動きをとめることによって確実に攻撃を当てることができた。

それを見たフレイムリザードが縦横無尽に飛び回り一行に狙いをつけ火炎球を

放つ。

その攻撃はタカヤ達も読んでいた。

ルピは出現させた鎌によって火炎球を瞬時に幾多にも切り裂き散らせ、

ルシフェルは出現させたクレイアーマーによる土の盾で防ぎ、

イレイサはアイスナムを放った直後に出現させたクレイアーマーに

反をかけリバウンドシールドを発動。

受けた火炎球を跳ね返す。

跳ね返された火炎球をもろに胴体へ受け、その衝撃に飛行できなくなったのか

溶岩の流れへと落ちた。

一体障害が減ったがまだ気が抜けない。

一行の先頭に立ったインテロが投龍を放つ。

これもまた直接的なダメージは与えられなかったがその威力による風圧に

軌道上あたりにいたピケルを吹き飛ばす。

正面の敵が手薄になった。

走るスピードを高めそれを後側にいた二体のフレイムリザードが

両脇に回り込み狙いを定める。

火炎球を放とうとしたその瞬間に二体のフレイムリザードは

瞬時に切り刻まれ落下する。

その場にはルピが浮遊しながら立っていた。

ルピ「あんまり人(悪人)以外狩りたくないんだけどなー・・・」

死神らしい愚痴をつぶやきながらアイスミサイルを上空から

前方のピケルの集団に向かって放つ。

機銃掃射のごとく放たれたそれは次々にピケルに、それも一発も外すことなく

射抜く。

上空よりの遠距離攻撃により前方のピケルが全滅した。

タカヤ「よし!先にいけ!」

立ち止まり着地したルピと残りはその横を通りすぎ走る。

一度刀を鞘に戻し姿勢を沈める。

後方より一行を追っていたピケルの集団が火の粉を飛ばすが

それにかまわず構える。

鞘と刀の刃の間からバチバチという音を立てられる。

タカヤ「召雷剣!!!」

抜刀し刀身にまとわり付いていた雷撃が放たれ火の粉を散らし、

ピケルの群れを貫く。

その一撃にてほとんどが消滅し、残ったものも雷撃により動きを止めるだろう。

残りはフレイムリザードが二体。

前へ振り向き走り出そうとしたが目の前の光景に目を疑った。

残る二体のフレイムリザードが向こう側の道へ降りる階段のあたり、

道とこの橋をつなぐ箇所へ火炎球を連射しているのだ。

一行が打ち落とそうと遠距離攻撃を放つが二体のフレイムリザードはそれを避け、

ルピによる奇襲も一体の背後に現れた瞬間もう一体が火炎球をルピに向かって

放ち攻撃する間も無く回避を余儀なくされる。

凶暴化された魔物がこれほどの連携を行うものだろうか。

いや・・・この感じはどこかで・・・

その思考を中断する。考えている暇ではない。

このままでは最悪橋を落とされる可能性がある。

そうなれば全員溶岩へまっさかさまだ。

タカヤも攻撃に加わるが効果がない。

火炎球の衝撃を受け続けていた階段部分は無残にも形を変え、

ビシビシと亀裂が入る音が聞こえてきた。

苦渋の決断だった。神殿への入り口が目の前にもかかわらず一時この場を下がり、

別の道を探す方法だ。

それをタカヤが告げようとしたその時。

小さな何かが爆発するような音。そして空を裂く音が耳に聞こえた瞬間。

二体のフレイムリザードのそれぞれ片翼を目に見えない何かが貫いた。

ルピ「何?!」

「クレジーショット」

どこからともなく聞こえた声。

―ダムダムダムダム!!!

その声の直後先ほどと同じ音が幾多も連なり見えない何かが

フレイムリザードの翼、胴体を何箇所も貫き一匹は溶岩へ落下。

もう一体は向こう側の階段のあった場所に落ちた。

「お前達、この場へ何をしにきた」

それは今まで自分達がやって来た橋。その橋を向こう側からこちらへ歩いてきた。

歩みを止めたその人物はエメラルドグリーンの髪を持ち赤い目。そしてその髪に

似たエメラルドグリーンのジャケットを白い長袖のシャツの上に羽織った男だった。

その両手には変わった形の筒にトリガーやらついた奇妙な武器を握っている。

その筒の先から小さな煙が上がっているのを見ると先ほどフレイムリザードを

貫いた何かはそれによって放たれたらしい。

イレイサ「あれは・・・銃?!」

剣や魔法等が主なこの国では銃は珍しかった。

銃に使われる弾丸。その装填等の作業を行う手間により

戦闘用武器として劣るとされていたのだ。

それに冒険者の中で珍しいという理由の一つに

スキルタイプの元となった8戦士の中には銃を扱う者がいなかったのだ。

「もう一度だけ問う。この場へ何をしにきた」

こちらへ殺気を向け銃の先をこちらへと向けたのが見えた。

タカヤ「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺たちはケルベロスに会いに来ただけなんだ!」

「ケルベロス・・・火の守護獣たる存在に何の為にだ」

イレイサ「魔物が凶暴化したという情報を受けてケルベロスに何か異変があったんじゃないか

    とやってきたんです」

イレイサの説明に男は銃の先を下ろす。

「・・・身分証明になるものを提示しろ」

男の言葉にその場にいたルピ以外がPMを開き自身の登録証明のページを向ける。

「プレイヤーズ登録者か。さっきの黒服の女はどうした」

ルピが姿を消していたのだが先ほどの様子を見られていたらしい。

そのことを指摘され仕方なくルピが現れる。

れすか「ルピちゃんはそのー・・・死神・・・なんです」

「・・・」

下げていた右手の銃を瞬時に上げ銃口を向ける。

「ピアシングショット」

男がそう呟くと銃身の先が光りその先から一筋の光に包まれた弾丸が打ち出された。

ルピに向かって。

ルピ「ちょっ!」

自身にあたる数センチ手前のところで幽体へ戻り避ける。

ルピ「ちょっと!!危ないじゃない!!」

実体になり怒る。だが直後背後にドサッという音が聞こえ振り向くとその先には

額を打ち抜かれ倒れたフレイムリザードの姿があった。

その口のところでは火がブスブスと燃えており、危うく火炎球を放たれるところだった。

ルシフェル「なっ!  Σ(・ω・;)ノノ」

「にわかには信じがたいが・・・どうやら死神というのは本当らしいな」

この男。事実かどうか試すとともにフレイムリザードの息の根を止めるという

ことを同時にやってのけたのだ。

インテロ「あ、案外驚かないんですね・・・」

「驚いてはいる。死神などというものが実在するとはな」

ルピ「れ、礼は言わないわよ。こっちもも少しで風穴空けられるとこだったんだから。

それで・・・あんたこそ何者よ?」

男は銃を腰に戻し上着の裏ポケットからPMを取り出した。

だがその色は黒く銀色の紋章のようなもので装飾されている。

フィルタ「フィルタ。それが俺の名だ。プレイヤーズ情報管理部リーダーを

 務めている」

そんな重要管理職の人間が何故ここへ。

フィルタ「お前達とここへ来た理由は同じだ。別の理由もあり

     職場を離れているのだがな」

タカヤ達が問おうとしたがフィルタが先に答えた。

だが別の理由という言葉が気になったが今は守護獣のほうが重要だ。

ここへやってきた理由は同じ。

フィルタ「・・・それなら俺も同行させてもらおう。死神等と一緒というのは

     少々不吉ではあるが」

ルピ「ちょっと!気に入らないならついてこなけりゃいいじゃん!」

一瞬瞳がルピの方へと向いた。

ルピ「う・・・」

その眼光の鋭さに思わず死神であるルピが口を閉じてしまった。

イレイサ「同行せざるを得ないみたいですね・・・」

隣のタカヤに話し掛けタカヤはああ・・・と返答する。

突然現れた銃使いの男を加え、一行の目の前に現れたのは

守護獣のいる火の神殿への入り口だった。

CP1−3終了

*このCP1−3に記載しているフレイムリザードの画像は

 相互リンクさせていただいています「TALES Walker」さんの

 モンスター情報欄よりお借りしました。





                    


管理人:ウェルス
性別:男

主な活動内容
・各種オンラインゲームプレイ
・2次創作系小説作成
・他、動画作成やら色々やりたいと
 思案中。

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